創始者ブログ FOUNDER'S BLOG

相談役 大坪久泰
創始者 大坪 久泰

自分の意見を堂々と言える、答えのない課題に答えを導き出す情熱と勇気をもつ、
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国際社会そして教育界に貢献したい、熱い思いと高い志をもつ方を歓迎します。

2020.06.22

MICのこと

 4月から5月にかけて毎日はらはらするような状況が続いていました。ようやくコロナ騒ぎは終息しそうな気配ですが、まだ安堵するという訳にはいきません。宮崎県は感染者17名で変化なしですが、東京は感染者が少し増えてきているようです。神奈川も安心できません。宮崎を遠く離れていると、何もできないのに、お節介ながらMICのことが気になります。テレワーク授業に先生や学生は慣れたか? 新入生はいきなり英語だけでのテレワーク授業で大丈夫だったか? 大学は対面授業が始まったのか? 等と想像しています。

 今月の文芸春秋(7月号)に、北海道富良野で仕事をなさっている脚本家の倉本聰氏が富良野の原生林で「何年ぶり、何十年ぶりに再会したような、抜けるような空の蒼」を見たと書いていますが、MICのある宮崎市清武ではいつでも見られる光景なのにと思いながら読みました。宮崎県は人口密度が少ない上に、自然環境は抜群に優れています。特にMICのある地域は清武町の中心からも少し離れた緑の中ですから、感染については何となく安心感があります。しかし、通学や留学生のことを考えると、事柄は簡単ではなかったのでしょう。宮崎の空の蒼さ、清武の樹木の深い緑は、住み慣れた人たちには眼に沁みるという感覚はあまりないのでしょうが、都会の一角に住むといつもそれを想います。

 去る5月25日の日本経済新聞17面に池上彰氏の大岡山通信 若者たちへ に「リモート講義の利点」「縮まる学生との距離感」という副題で東京工業大学大岡山キャンパスの例が述べてありました。池上氏はテレビや雑誌等で解説をされる売れっ子のジャーナリストで、私は著書だけではなく、新聞・雑誌への寄稿文も好んで読みます。教育問題だけではなく、時事問題一般、科学技術から外交問題まで守備範囲の広い方で、解説の解り易さは抜群です。

 上記新聞記事に紹介されているのはリモート講義のことですが、失礼ながら、私の正直な印象は何を今更という感じでした。MICはずっと早くから双方向というより多方向のinteractive class(対話授業と訳していますが、くどく言えば、先生や学生が相互に積極的に働きかける授業なので、interactiveとは、とても気に入っている言葉です)を展開しているからです。(池上氏に対しては、水を差すようなことを書いて心苦しいのですが)。 MICの場合、一部の授業ではなく、全教員・学生が参加する大学全体の活動で、伝統的にこの授業形態をとる素地を持っています。

 こんなことを考えているところに、学園本部からAP最終年度報告書とアクティブ・ラーニング事例集(日・英、Vol. 1, Vol.2)が送ってきました。

 AP事業というのはホームページで度々紹介されていますが「大学教育再生加速プログラムの略でAPはacceleration programの頭文字をとったものです。この事業は文部科学省が主催したもので、本学はテーマI「アクティブ・ラーニング」とテーマII「学修成果の可視化」の複合型に応募して、平成26年に採択された6年間のプロジェクトで、高額の助成金を頂いたものです。全国で800校以上もある大学(応募した大学がどれほどあったかは知りませんが)の中から46校が選ばれましたので、名誉のある助成金です。採択されたのは私が学園理事長を退任する一年前でしたので、この事業には強い思い入れがありました。応募申請書作成にも関与していますから思い入れがあります。

 この6年間に及ぶ事業は綿密な計画作業から始まっています。MIC国際教養学部は開学当初から、クリティカル・シンキングに基づくアクティブ・ラーニングによってリベラル・アーツ科目について英語だけで学ぶことを標榜してきましたが、この事業を始めるにあたって先生たちは5つのワーキング・グループ(研究班)に分かれてプログラムの遂行にあたったのは既に報告されている通りです。

 私が強い興味を持っているのは、クリティカル(批判的、厳密な)であることの要素分析から始められていることです。つまり、思考するにあたって、厳密になるべき要素を分類・定義することを始めています。こういう作業を分析作業というのでしょうか。本来、criticalということは厳密さ・厳正さですから、いわば規範的概念です。概念的なことを具体化するということは哲学的思考を伴う困難な作業です。先生たちは学生がクリティカル・シンキングcritical thinkingをどのように、あるいはどの程度行っているかをテストする方法を考えました。それがCTテストです。実際、学生にそのテストを行ってみて教育技術上有効であることを証明しています。つまり、学生の思考力を点数化しているわけです。これが可視化ということなのでしょう。先進校であるアメリカのテネシー工科大学のCTテストを学んだということですが、MICは改良してMIC版のCTテストを開発しています。

 AP事業ではアクティブ・ラーニング事例集も刊行していますし、e-portfolioについても大きな成果を上げています。できれば次回に紹介したいと思っています。

 今、世間ではアフターコロナということが言われています。高等教育の世界でも教育法はもちろん、教育の在り方についての大きな変化が起こると思っています。MICは今までも時代の先端を走っていましたが、今後もその道を歩み続けるでしょう。