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創始者 大坪 久泰

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2018.12.18

新渡戸稲造(1)

 NHKテレビ午前8時からの連続テレビドラマ「まんぷく」に、松坂慶子さんが「私は武士の娘」が口癖の少しコミカルな大奥様役で出演されています。武士とは封建制度の産物とはいえ、日本人が持っているある種の矜持やアイデンティティーの証であり、日本人には武士への憧れをもつ人も多いように感じます。松坂さんの演技は冗談の様であっても、ドラマ作者の意図した主張が少しあるようにみえます。

 武士と言えば、武士道です。著名な著書として知られている新渡戸稲造の「武士道」があります。流麗な英語で書かれていると言われている英文版BUSHIDO The Soul of Japan, Inazo Nitobe IBCパブリッシング刊をもっていますが、今回改めて読み直しました。難解な単語には註解がついていますが、それでも読むには大変苦労します。この著書は最初にアメリカで出版され、その後に世界的なベストセラーになったそうです。第26代アメリカ大統領Theodore Rooseveltは「武士道」を読んで感動し、この著書を沢山購入して友人知人に配ったという逸話があるそうです。そして、日本や日本人に好意を持ち日露戦争の講和条約締結に仲介の労をとり、また我が郷土出身の外交官小村寿太郎にも便宜を図ったという逸話もあります。これらの逸話は吉村昭著「ポーツマスの旗」 新潮文庫等に詳しくでています。

 英文の「武士道」読後に、岬龍一郎訳「武士道」PHP文庫495を読みましたが、これとて読むには古典の詩歌や漢文・漢詩の読解力が問われます。高校生の頃の国語科の不勉強を後悔しました。

 新渡戸稲造はその信念によってだけではなく、教養の深さや広さによっても偉大な人物です。専門は農業経済・農学だそうですが、日本の古典・詩歌のみならず外国語力・西洋文化の知識は大変なもので、中国の古典を広く読まれているし、シェークスピアからギリシャ哲学、近代の哲学、社会学などあらゆる分野にまでその知識が及んでいるのには驚きます。新渡戸稲造には他に「修養」角川ソフィア文庫という「武士道」の姉妹書ともいえる著名な本もあります。これも今回読み返してみました。

 武士道は岬龍一郎氏が解説しているように(武士道 新渡戸稲造著 岬龍一郎訳 PHP文庫495 p198)「武士道は、あくまでも日本の長い封建風土のなかで、武士のあるべき姿として自然発生的に培養され、そのつど時代に即応して研鑽され、やがては“武士の掟”となった不文不言の倫理道徳観であった。」という日本固有の修養精神です。

 新渡戸稲造はウィキペディアによると青森県盛岡の出身で、早くから東京で英語を学んだが、Boys be ambitious!(少年よ 大志を抱け!)で有名なウィリアム・クラーク博士がいた札幌農学校で学んだ後、現在の東京大学、アメリカのジョーンズ・ホプキンズ大学で学んだクリスチャンで、第一高等学校(現在の東京大学教養学部)校長、国連事務次長、東京女子大学学長などを歴任された方です。専門は農業経済、農学だそうですが、英語はもちろん、著書から想像すると他の外国語にも通じておられたように思えます。現在の5千円札の肖像は樋口一葉ですが、古い5千円札の肖像は新渡戸稲造でした。

 今回このブログで新渡戸稲造を取り上げるのは、本学国際教養学部が教育目標とする国際的リベラル・アーツを体現された偉人だからです。もう10年以上前に武士道を学び直そうというブームがあったそうですが、倫理概念として武士道をもう一度取り上げ、また教養に重ねて修養ということも考え直してみたいと思うからです。

 もう70年以上前のことですが私が旧制の中学生だったころ、クリスチャン一家の一員の同級生がいて親しくなり、彼の家には、おそらくお父上の蔵書だったと思いますが新渡戸稲造全集や内村鑑三全集がありました。持ち出して読んでもよいとのこと、借り出して読み漁りました。勉強がよくできる友人も彼のお母さんも私が読書に励むのを賞賛して下さるので、調子に乗って読みました。今思い返すと、理解していたのかどうか怪しいですが、読み通したのは間違いありませんので、全く理解していなかったということはなさそうです。難しい本であることは事実ですが、内容は観念的なものではなく、現代にも通じるような具体性があって納得しながら読むことができます。「武士道」は西洋人に読んで貰うことを意識して書いたそうですが、「修養」は日本の若者を意識して書かれたように思えます。次回から両書の要約を書くつもりです。教養とは何か、修養とは何か、どうすればよいのかを知る機会だと思います。年末年始は時間に余裕を見つけられそうですので、自己内省のための良い機会です。